つわり、悪阻
はじめに
悪阻(つわり)とは
つわりとは、妊娠初期に多くの女性が経験する一般的な症状のことです。通常、妊娠初期の第1〜3ヶ月に起こります。つわりの症状には、吐き気、嘔吐、食欲不振、疲労感、頭痛、めまいなどが含まれます。これらの症状は、ホルモンの変化や妊娠に伴う身体の変化によって引き起こされる可能性があります。つわりの程度は個人によって異なり、一部の女性は比較的軽度であり、他の女性は重度のつわりを経験することがあります。通常、妊娠中期以降につわりの症状は改善し、消えていくことが一般的ですが、個人差があります。
個人差がある理由
- ホルモンレベルの違い: 妊娠中に女性の体内のホルモンレベルが大きく変化します。つわりの症状は、これらのホルモン変化に対する個々の体の反応によって引き起こされます。個々の女性の体がホルモン変化に異なる方法で応答するため、つわりの程度や症状が異なります。
- 遺伝的要因: 遺伝子の違いは、つわりの発症や重症度に影響を与える可能性があります。つわりが母親や祖母などの家族内で顕著に現れることがあり、これは遺伝的な要因が関与している可能性があります。
- 妊娠の歴史: 過去の妊娠経験やつわりの経験も、現在のつわりの症状に影響を与える可能性があります。以前の妊娠でつわりを経験した女性は、同様の症状を再び経験する可能性が高いですが、必ずしもそうとは限りません。
- 生活習慣や食事: 個々の女性の生活習慣や食事は、つわりの症状に影響を与える可能性があります。特定の食べ物や匂いに対する感受性、ストレスのレベル、睡眠の質などが、つわりの程度に影響を与えることがあります。
つわりの種類
- 吐く、吐き気がする(吐きつわり)
- においに敏感になる(においつわり)
- 食べ物がほしくなる、好みが変わる(食べつわり)
- 眠気がする(眠りつわり)
- イライラしたり、頭痛がする
つわりでなぜ吐く?
- 胃の動きの変化: 妊娠中、胃の動きが遅くなることがあります。これは、胃の筋肉の動きが緩慢になり、食べ物や消化物が胃の中にとどまる時間が長くなることを意味します。胃の動きが遅くなると、妊娠悪阻の症状が悪化する可能性があります。
- 嗅覚の過敏: 妊娠中、多くの女性は嗅覚が鋭敏になります。これにより、通常は気にならない匂いでも、妊娠中の女性にとっては強烈な不快感を引き起こすことがあります。特定の匂いが吐きつわりのトリガーとなることがあります。
匂いつわりとは?
匂いによって悪阻(つわり)が引き起こされる理由は、脳と身体の複雑な相互作用に関連しています。一般的には、妊娠中の女性の感覚器官は通常よりも敏感になり、特に嗅覚が鋭敏になることがあります。このため、一般的には気にならない匂いでも、妊婦にとっては強く感じられることがあります。
匂いに対する過剰な感受性は、特に妊娠初期のホルモンの変化と関連しています。妊娠中にはプロゲステロンやエストロゲンなどのホルモンのレベルが上昇し、これが嗅覚を増強させることが知られています。そのため、一般的には耐えられる匂いでも、妊婦にとっては過度に強く感じられ、それがつわりの症状を引き起こす可能性があります。
鍼灸甲乙経ー《婦人雜病第十》-引用c-text
鍼灸の有名な古典、甲乙経には以下のように婦人病について記載がある。
婦人雜病第十
乳子下赤白,腰俞主之。女子絕子,陰挺出不禁白瀝,上 主之。女子赤白瀝,心下積脹,次 主之。腰痛不可俯仰,先取缺盆,後取尾 。女子赤淫時白,氣癃,月事少,中 主之。女子下蒼汁不禁,赤瀝,陰中癢痛,少腹控 ,不可俯仰,下主之,刺腰尻交者兩胂上,以月生死為 數,發針立已。腸鳴泄注,下 主之。婦人乳余疾,肓門主之。寒熱短氣,臥不安,膺窗主之。乳癰,淒索寒熱,不可接,乳根主主之。腹滿疝積,乳余疾,絕子陰癢,《千金》云:奔豚上腹堅痛,下引陰中,不得小便,刺陰交入八分刺石門。女子絕子, 血在內不下,關元主之《千金》云:胞轉不得端,少腹苦寒,陰癢及痛,經閉不通,中極主之。婦人下赤白沃後,陰中乾痛,惡合陰陽,少腹 堅,小便閉,曲骨(《千金》作屈骨主之。女子血不通,會陰主之。婦人子髒中有惡血逆滿痛,石關主之。月水不通,奔豚泄氣,上下引腰脊痛,氣穴主之。女子赤淫,大赫主之。女子胞中痛,月水不以時休止,天樞主之《千金》云:腹脹腸鳴,氣上衝胸,刺天樞。小腹脹滿,痛引陰中,月水至則腰脊痛,胞中瘕,子門有寒,引髕髀,水道主之《千金》云:大小便不通,刺水道。女子陰中寒,歸來主之。女子月水不利,或暴閉塞,腹脹滿,癃,淫濼身熱,腹中絞痛, 疝陰腫,及乳難,子搶心,若胞衣不出,眾氣盡亂,腹滿不得反復,正偃臥,屈一膝,伸一膝,並氣衝針上入三寸,氣至瀉之。婦人無子,及少腹痛,刺氣衝主之。婦人產餘疾,食飲不下,胸脅 滿,眩目足寒,心切痛,善噫,聞酸臭,脹痺,腹滿,少腹尤大,期門主之。婦人少腹堅痛,月水不通,帶脈主之。婦人下赤白,裏急螈 ,五樞主之。妒乳,《千金》云:膺胸痛太淵主之。絕子,商丘主之。穴在內踝前宛宛中。女子疝瘕,按之如以湯沃其股內至膝,飧泄,灸刺曲泉。婦人陰中痛,少腹堅急痛,陰陵泉主之。婦人漏下,若血閉不通,逆氣脹,血海主之。月事不利,見血而有身反敗,陰寒,行間主之。乳癰,太衝及復留主之。女子疝及少腹腫,溏泄,癃,遺溺,陰痛,面塵黑,目下 痛,太衝主之。女子少腹大,乳難,嗌乾嗜飲,中封主之。女子漏血,太衝主之。女子俠臍疝,中封主之。大疝絕子,築賓主之。女子疝,小腹腫,赤白淫,時多時少,蠡溝主之。女子疝瘕,按之如以湯沃兩股中,少腹腫,陰挺出痛,經水來下,陰中腫或癢,漉青汁若葵羹,血閉無子,不嗜食,曲泉主之。婦人絕產,若未曾生產,陰廉主之。刺入八分,羊矢下一寸是也。婦人無子,湧泉主之。女子不字,陰暴出,經水漏,然谷主之。女子不下月水,照海主之《千金》云:痺驚,善悲不樂,如墜墮,汗不出,刺照海。婦人,水泉主之。婦人漏血,腹脹滿不得息,小便黃,陰谷主之《千金》云:漏血,少腹脹滿如阻,體寒熱,腹偏腫,刺陰穀。乳癰有熱,三里主之。乳癰驚痺,脛重,足 不收,跟痛,巨虛下廉主之。月水不利,見血而有身則敗及乳腫,臨泣主之。女子字難,若胞不出,崑崙主之。
田中訳
赤ちゃんが赤白を下す場合は腰兪が主である。 子を失い、陰の白血の漏出が止まらない婦人が主治。 赤白血で心臓の下が膨張している女性は、第二の主治である。 腰痛で前かがみになれない女性は、まず缺盆を取り、次に尾を取る。 赤ら顔で色欲があり、尿が貯留し、月経量が少ないときに白い色に悩まされる女性には、真ん中のものを主治とする。 蒼白汁の失禁、膣の発赤、かゆみ、痛み、下腹部の制止、屈むことができない女性には、下方の本治は、腰と尾骨の二腋を刺し、生死の月数を数え、鍼を出し、立ち上がる。 腸鳴と、尿漏れには、以下を主軸とする。 婦人の乳房の疾患には、肓門を主治とする。 寒熱、息切れ、臥床不穏は膺窓主治とする。 乳房膿瘍は、残酷な寒熱、不通は乳根の主治である。 腹部のヘルニア,乳房のしこり,膣の痒みがある場合,『千金』曰く,「上腹部は固く痛み,膣の下部は排尿できないので,石門に八分刺し、陰交に刺す」。 子を失い、血が体内に留まっていない女性は、関元が主治する『千金』に「胞が末端まで回らず、腹部は辛く冷え、陰は痒く痛み、月経は閉じている場合は中極がこれをつかさどる。
訳大変なので途中まで
症例
治療前
36歳、女性。妊娠二人目
妊娠初期でつわりがひどく、まともに行動できない、めまもしたり、すぐ吐いてしまう。
治療
三陰交
陰陵泉
次膠
後谿
攅竹
魚腰
治療後
治療後2週間後再来院。
前回治療後からつわりがなくなって快適に過ごせているとのこと。
古典にも様々婦人病にかんしては記載があるが、長野式のホルモンバランス調整穴をうまく組み合わせることによって様々な婦人病に対応できる。