脳梗塞後遺症
2日前、患者のご家族から電話があった。
「先日主人が亡くなってしまいました。」
2020年3月から往診で治療していたおじいちゃんが亡くなってしまった。
脳梗塞1回目(右半身麻痺)
最初に往診に呼んでもらったきっかけは、2020年1月、趣味のコーラスサークルで歌を唄っている途中に倒れて救急車で運ばれ、その後自宅の介護ベッドから立ち上がれなくなってしまった。
奥様が鍼灸治療をずっと受けていたのもあり、脳梗塞後も鍼灸でどうにかならないかとのご相談で往診することになった。
鍼灸治療を続けているとベッドから立ち上がれるようになった。
自分で歩けるようにもなったのでひとりでトイレに行くことができるようになった。
慢性硬膜下血腫
それでも生活していると転ぶことがちょくちょくあり、頭をぶつけてしまうことが多々あった。
ある日転倒しとき結構な出血だったのでMRIを撮ってもらったところ、「慢性硬膜下血腫」と診断された。
慢性硬膜下血腫とは
頭を強く打つなどの原因で、脳を包む硬膜と脳の間にじわじわと出血して、血の塊ができる病気で。高齢者やアルコールを多く飲む人、血液がサラサラになる薬を飲んでいる人などで起こりやすい病気です。症状は様々ですが、認知症のような症状が出たり、頭痛や吐き気、麻痺などがでる場合もありま。診断は頭部CT検査により行なうことが一般的です。治療としては、穿頭血腫除去術という短時間の手術を行なうことが一般的ですが、血腫が小さくて症状が乏しい場合には、自然に治るのを待つ場合もあります。
手術で血液を抜く手段もあったが、手術による身体のダメージを考え手術はしなかった。
鍼灸治療を続けていたおかげもあったのかその後何回かの治療後再度MRIを撮ったら血腫は無くなり、その後も再発はしなかった。
脳梗塞2回目
その後順調に生活していたが、2021年7月、再度脳梗塞で倒れてしまった。
入院後、再度往診へ伺う。心配していたので久しぶりに会えて嬉しかった。
が、今回の脳梗塞の症状は記憶喪失も含まれていた。おじいちゃんは自分のことを覚えてはいなかった。
今回は立ち上がるのもさらに困難になっていて、車椅子、簡易トイレ、おむつ生活になってしまっていた。
自己紹介をして鍼治療をするも、奥さんに「なんでこんなものにお金をかけているんだ。お金をだまし取られているんじゃないか」と鍼治療に対して疑心暗鬼しかなかった。
それでも何回か往診を重ねるうちに「あなたは信頼できるなあ」と1回目倒れた時と同じことを言ってくれた。そしてまたなんとか立ち上がれるようにまでなり、軽く足踏みをして廊下を歩いたりできた。
好きだった書字や日記、コーラスをまたやってもらったりと、伺う度色々リハビリを工夫していた。
しかし時間が経つにつれじわじわと全身の筋肉が弱っていっているのを感じていた。
右手は完全に挙がらなくなり、寝返りができなくなり、起き上がって座ることができなくなり、喋っていることがどんどん曖昧になり、最後には日中でもほぼずっと寝ているような状態だった。
最後の全身の筋肉の衰退は鍼治療ではどうにもならなかった気がする。
誤嚥性肺炎
そのうち内臓の筋肉も落ちてきてしまったせいか、誤嚥性肺炎を起こすようになってしまってしばらく入院することになってしまった。
何度か退院することはできたものの今度は褥瘡などでまた入院したりと、忙しい日々を送っていたようだった。
その最中、誤嚥性肺炎で病院で亡くなってしまったとのことであった。
脳梗塞後遺症における鍼治療の効果
今回ここには書ききれていないが、脳梗塞の後遺症のことで鍼治療に伺っていて治療後に起きた奇跡というか、おお!?!?ということが他にもたくさんあった。
その甲斐もあってか御家族の強い希望もあっておじいちゃんは施設に入ることはせず、おばあちゃんが自宅で介護をするということで自宅療養を選べた。
僕が伺った日、おじちゃんはいつも元気になってしまい、夜、娘さんに沢山おしゃべりしていたという。
なかなかいい結果が得られない脳梗塞後遺症の症状もあるが、今回のケースのようにとても良いこともあったりする。1週間に一回の治療でいい結果が得られる。
他に脳出血後遺症の方を何人か診たが結果はあまり良くなかった。
また脳梗塞後遺症を診ることがあればまた最後の最後まで傍にいて診ていたいと思う。