バイブレーショナル・メディスン抜粋5
新時代のエネルギー原理
エネルギーと波動をよりふかく理解し、それらが分子の構造や有機体のバランスといかに相互作用するかを探求する医学の一分野は「波動医学」とよばれ、じよじよに進歩してきでいる。波動医学は真の意味でアインシュタイン的医学であるといえる。
なぜなら、エネルギーと物質が同一物の異なる側面であることを理解するための重要な鍵をあたえてくれるのが、アインシュタインの方程式だからである。現代医学のモデルは、ニュートン物理学的な性格をもっている。なぜなら、その薬物動態学的な治療は分子生物学的機械論的アプローチを基礎としているからだ。ニュートン的機械論に基礎をもっ医学分野のなかでも、外科手術はとくに粗大な手法である。ヒーリング・アート、すなわち癒しのわざは、物理学をはじめとする隣接分野のあらたな科学的知見をもとに、日々更新していかなければならない。
医学はいま、診断と治療に役立つ可能性をひめた、不可視のエネルギーによってなるかくされた世界が発見され、意識の潜在カに研究の自がむけられはじめた、ほんの「とば口」 のところにいる。不可視の世界のうちでも、めざめた科学者がメスをいれる最初の領域になりそうなのは「エーテル界」のエネルギーである。研究者たちは、「エーテル体」がエネルギーによる生長の鋳型であり、生長・発達だけでなく機能障害や、死の誘因ともなりうることをみいだすだろう。そのようなめざめた研究者たちの卓越した洞察にもとづいて、医学は、多くの疾患の原因がエーテル体レベルに存在することを理解しはじめるであろう。
われわれ自身の多次元的な性質にかんする理解と微細エネルギー的な治療法の応用によって、医学は現在の薬剤や外科手術への依存から脱却し、より非侵襲的で自然な治療体系を志向するようになる。さらに、そうしたより高い周波数のエネルギー系とわれわれ自身との関係が認識され、科学者たちが人間の霊的側面に気づき、生命力発現の法則を認識したとき、宗教と科学の融合という究極的な道がひらかれるようになるだろう。医学において「ホーリズム」(全体論)が重視されていくにつれて、やがては、人間の健康には身体性・精神性・霊性の統合が必要であることを理解する医師の数がふえることになるだろう。
未来においては、意識状態そのものが科学探求のための重要な道具、として認識されるようになるだろう。波動医学のあたらしい領域は、人体のエネルギー的構造をあきらかにするための特殊な精神的トレーニングを必要としている。医学がその方向に発展していけば、診断能力が飛躍的に向上し、現在っかわれている方法よりもずっと早期の診断が可能になるだろう。微細なエネルギー場を感知する能力は、高電庄写真技術によって大幅に向上している。しかしながら遠い将来には、われわれにそなわった知覚能力がそのようなテクノロジーをしのぐようになっている、だろう。それを可能にするための鍵は、われわれが超感覚的知覚のつかいかたを身につけられるような方法を発見するかどうかにかかっている。人間の心にひそむかくされた潜在能力を最大限に利用できるようになったとき、われわれは多次元的宇宙の微細エネルギー的な要素にさらに接近できるようになるのである。この本は、人体の微細エネルギー的構造を理解するための筋道だったモデルを提供しようとする試みである。
そのために、古代の癒しの体系や未来のエネルギー的診断・治療法の理解を助けるような合理的な基盤を提供している。このあたらしいかんがえかたの背後に存在する中心的概念のひとつは、人間が多次元的存在であるという認識にある。人間はたんなる骨と肉、細胞とタンパク質以上の存在である。われわれはさまざまな周波数や形能いからなるエネルギーと光でみたされた宇宙のダイナミックなバランスのなかに存在している。すでにあきらかなように、われわれは宇宙の構成成分である、凍結した光によってできている。神秘家たちは各時代をつうじて、われわれ自身が光であると言及しつづけてきた。科学がやっと、そのことばの裏にある基本的な前提を評価しはじめたのが、いまという時代なのだ。
この章では、読者が次章以下の内容を理解するのに役立つような、エネルギーにかんする基礎知識を提示してきた。このあとは、どの章もそのまえの章を基礎にして展開していく。ある意味では、この本はエネルギー医学の教科書であるとともに、その発達の歴史の解説書でもある。この波動医学の連続講義ではいずれ、フラワー・エッセンス療法、宝石療法、ホメオパシー(同種療法)などの癒しの手段がなぜ有効なのか、またそれらがどのていど微細エネルギーの構造の理解にもとづいているのかをあきらかにしていくつもりである。フラワー・エッセンスや宝石エリクシル(ジェム・エリクサー)、ホメオパシーなどをもちいる人はたくさんいる。しかしそれがなぜ効くのかを知っている人はほとんどいないのだ。
生薬医学ーー薬物療法のはじまり
生薬医学は、現代の医師の自にはなんとなく古くさい治療法とうつりがちである。科学を信奉するほとんどの医師にとって、生薬をつかう医師のイメージは伝統的なヒーラー、つまり「呪医」のそれとひとしい。部族社会でおこなわれている「密林医学」では、それぞれの疾患におうじて、ヒーラーがその土地固有の多様な植物の草根木皮を処方する。これは現代でもアフリカなどの諸部族にみられる治療様式であるが、ヨーロッパやアジアでもかつて何世紀にもわたっておこなわれてきた医学のありかたを示してもいる。もっとも初期の生薬医学の文献に、『神農本草経』がある。この書物は古代中国の医師がまとめたもので、その起源はBC2800年ごろにさかのぼるといわれる。その記録には病気治しのための三六五種の薬草がまとめられている。しかし初期の生薬医学の教科書としてもっとも有名なのは、おそらく『デ・マテリア・メデイカ』(『薬草について』)であろう。これはAD一世紀にペダニウス・ディオスコリデスという、小アジアの軍医によって書かれたものである。ディオスコリデスは当時の薬草にかんするあらゆる医学情報を、この本のなかにまとめあげた。それぞれの薬草の医学的特性についての詳細な解説、ちいさなスケッチ、植物の加工のしかた、処方量、おこりうる毒性などが詳細に記載されている。
歴史的にみれば、生薬医学はあきらかに現代における薬物療法のルーツである。生薬には多くの化学物質が含まれており、さまざまな活性をもち、投与量におうじて変化する多様な生理作用をおこさせる。こんにちもちいられている薬物の大半はむかしの呪医が治療用につかっていた生薬に由来しており、現在ひんぱんにつかわれているものの多くは、現代薬理学的な研究のすえに、その薬理効果が評価されるようになったものである。
いまでは、アスピリンが生薬に由来するものであることを知っている人はほとんどいないだろう。しかし現代の医師がアスピリンの作用機序についての分子機構を理解できるようになったのは、ごく最近になってからのことである。
現在つかわれている薬物のうちで生薬医学にルーツをもつもののひとつに、キツネノテブクロの合成薬がある。キツネノテブクロの抽出物はジギタリスとよばれ、たいへん高い活性をもっている。1700年代後期の生薬医は、心臓病によって体内に水分が貯留した人にキツネノテブクロが有効であることを知っていた。二十
世紀になってから、科学者は心機能調節作用をもつキツネノテブクロの有効成分がジギタリスであることを発見した。そして現代科学の研究手法によって、心不全が生じているときにジギタリスが心臓を助けるしくみが細胞学的・分子生物学的に理解できるようになった。さらに科学技術と有機化学の急速な進歩によって、ジギタリス(あるいはその合成物のジゴキシン)は試験管やビーカーのなかでつくられるようになった。現代の医師たちは、植物から抽出されたジギタリスはもはや必要としなくなり、むしろ純粋な合成物を好むようになってきた。というのは、合成物のジゴキシンならば、患者の体重や年齢にあわせた正確な処方量がきめやすいからだ。最大の治療効果および毒性を生じる薬物濃度をみきわめるために、薬物の血中濃度をモニターすることも、いまではかんたんにできる。いってみれば、薬物療法は生薬医学をより純粋化したものである。薬草から活性物質を抽出することによって、薬草は生理活性をもったごく一部の成分だけからなるエキス剤や錠剤におきかえられていった。
しかし、あたらしい薬物療法にたいする批判もないわけではなかった。生薬医学でっかわれていた天然の植物には、すべてを抽出することが困難なほどに多様な物質が含まれていた。単一成分からなる錠剤をのんでも、患者はもとの薬草にみられたような付加的・相乗的な治療効果を期待することはできない。薬草に含まれているこうした付加的成分も治療に寄与していたかもしれないからだ。しかし残念なことに、特定の疾患にたいして、薬草そのものと合成薬物をもちいたときではどれほど治療効果がちがうかを比較した研究は、ほとんどみつけることができない。
合成薬物療法の支持者は、収穫された薬草それぞれの有効成分の濃度が一定していないという、生薬の欠点を指摘する。正確に計量された純粋な薬物ならば、年齢、体重、体表面積などの多様な因子にもとづいて科学的計算を進めるのがきわめてかんたんである。量を正確に計算して毒性を最低限におさえられるし、薬理効果のつよさを予測できるという利点もある。しかし、用量と薬理効果との関係について議論しても、いずれの学派もそれぞれ自己に有利な論拠を示してくるだけで結着はつくまい。そこで生薬医学の一系統である「ホメオパシー」を検討することで、合成化学薬品より本家の薬草のほうが有効だという、もうひとつの理由をあきらかにしておきたい。