虫垂炎
この度、家内が虫垂炎になりました。
そこで今回のブログの内容は虫垂と虫垂炎の灸治療について書いていきます。
まずそもそもきっと一般的に
虫垂炎になった=盲腸になった
虫垂を切除した=盲腸とった
ということで虫垂という意味を指しながら盲腸とい言葉を使っている方が多いのではないでしょうか。
体内組織としては名前が違うので明らかですが、虫垂=盲腸ではありません。盲腸の端っこに小さく虫垂がくっついています。
ではなぜ虫垂という言葉を使わないのでしょうか。私は暫くこの言葉の使い方にもやもやしていました。
虫垂炎(ちゅうすいえん、英: appendicitis、略してアッペ)は、虫垂に炎症が起きている状態である。虫垂炎は旧来盲腸炎(もうちょうえん)あるいは盲腸と呼ばれていた時期があり、これは昔、診断の遅れから、開腹手術をした時には既に虫垂が化膿や壊死を起こして盲腸に張り付き、あたかも盲腸の疾患のように見えることがあったためである。
虫垂炎 – wikipediaより
ある日、虫垂について調べていてwikiを開いたら、とてもスッキリしました。そういうことだったんですね。
喉の扁桃もそうですが、虫垂も少し前までは再発を防ぐ意味も含めて、悪くなったら大事に至る前にすぐ切除していました。近年までは扁桃や虫垂は取っても死にはしないし、人体に特に影響は無いだろうと思われていたためです。
皆さんも耳にしたことがあるかと思われますが近年の研究では虫垂は人間にとって大事な役割があるとのことで虫垂炎になっても温存することを選ぶ人が増えてきました。
以下にその役割をまとめます。
- 虫垂を失うと大腸の腸内細菌バランスが崩れ、腸管感染症や炎症性腸疾患を発症することが報告された
- ヒトにとって虫垂は欠かせない存在である、それは善玉菌の備蓄機能を備えている
- 48万人のカルテを元にした研究では虫垂切除を行っていない患者群で0.29%だった発症割合が切除した患者群では0.92%とリスクの増加が認められた
- 2009年には、ミッドウェスタン州立大学で進化生物学を研究するヘザー・スミス氏によって、虫垂にはリンパ組織が集中しており、白血球を大量に生成して生物の免疫の手助けをしていることが発見されている
- 虫垂を切ると、その後3年半の間、大腸がんのリスクが2.1倍になる
- 放射能の代謝を助ける?(ソース不明)
以上がこれまでにわかっている虫垂の主な生理的役割です。これらのことを見ると、なるべく温存したほうがいいのでは?と思われるかもしれませんが、もちろんデメリットもあります。
- 10~35%くらいの人は再発の可能性がある
- 手術が遅れると重症化して命の危険がある
などです。胃の痛み、不快感が初期に来て、おなかが痛いくらい我慢してれば治るだろうと思い、我慢しているうちに重症化してしまうといった具合です。
胃の長時間の不快感、痛みがあれば病院へ行き、診てもらうことが大事ですね。
次に虫垂炎の鍼灸治療についてです。
澤田健先生の鍼灸真髄に「虫垂炎の腹の痛みには、気海穴に灸を据える」とかいてあります。臨床例が書いてある訳ではなく、ホントかな?と心の中では思っておりました。今まで虫垂炎のOPEの痕跡の圧痛には使うことがありましたが、リアルタイムで虫垂炎の腹痛の人に出会うことができなかったので、さっそく試してみました。
結論から言えば「著効あり」でした。
最初、胃のあたりの痛みが出始めて、ただの胃痛なんかじゃないの?と油断してました。
1日経ってもどうしても痛すぎるし、水を飲んでも白湯を飲んでも何を食べても腹が痛いとのことで、病院へ行ったところ、CTを撮り、虫垂炎で、大腸の一部にも炎症があるかもねとの診断を受け、薬を貰いました
3日目、痛みは少し治まるもののまだまだ痛く、全く動けず、普段おしゃべりの奥さんも全く喋れなさそうなので、これは相当な痛みなんだなと感じました。痛みが強くぶり返してくれば手術となるので我慢しないようにと言われていたので様子を見ていました。
4日目、痛みはまだまだ変わらず苦しんでいたところ、「お灸を試してみるか」となりました。気海への多壮灸をしたところ、腹の緊張がとても楽になり下腹部の痛みはほぼ無くなりました。起き上がって歩いてみるとゆっくりトボトボ歩いていたのが、シャカシャカ歩き、ぺちゃぺちゃ喋り始めました。が、そんなのも束の間、そのあと移動するとき少しの振動や衝撃で腹に強い痛みが再度出ました。
5日目以降、痛みがある状態で気海に灸をすえるとすごい楽になるのを度々経験し、下腹部の痛みはすぐ無くなり、残っているのは胃の不快感のみ。大巨と中脘にも灸を追加し、発症から7日目にして胃の不快感もなくなり、午前中午後ともほとんど腹の痛みもなく動けるようになりました。
お灸の熱刺激で腸内細菌叢が良くなり、症状緩解に至ったのか。それとも薬で痛みを散らすときはだいたい7日ほどで、自然に治まってくるものなのかわかりませんが、お灸した瞬間に腹の痛みがとても楽になるということがあったので、もし薬で痛みを散らす最中の腹の痛みに困っている方がいたら試してみてはいかがでしょうか。
虫垂炎時の腸内細菌叢の悪化が、気海へのお灸によって改善されるのなら、虫垂を温存したい方にとっては薬+点灸は考慮される治療になるのではないでしょうか。
しかし、上記しましたが、我慢することで虫垂炎が悪化し、最悪の場合に至ることがありますので、無理しながら全てお灸に頼ることは無い様、くれぐれもご注意下さい。