ミラーニューロン
過去10年ほどの間に、人間の脳が情動感染(emotional contagion)を受ける仕組みが明らかになってきた。まるでワイヤレス・ネットワークのように人の感情を他者に伝染させるのは、脳のミラーニューロンだ。この微細な神経細胞のおかげで、私たちは他者の感情を理解したり共感したりできる。誰かのあくびが目に入ると、ミラーニューロンが作動して自分もあくびをしたくなる。部屋の反対側にいる疲れた様子の人を見ると、自分の脳もその疲れを感知する。
https://www.dhbr.net/articles/-/3826 より
前回の終わり方でちらっと紹介しました、ミラーニューロンです。
上の数行だけでもすでに面白そうですがまず私は、欠伸(あくび)のうつる理由のひとつとなっていることに感激しました。人間が欠伸をする理由や、欠伸が人から人にうつる理由が気になって調てました。
脳科学分野の方はもちろんリハビリ分野の方はミラーニューロンについて知っているという方、いらっしゃるのではないでしょうか。なんでリハビリ?と最初思いましたが、それほどにミラーニューロンはいろいろな分野で説明されていて、調べていると面白いものでした。以下にミラーニューロンについて様々な分野の情報を箇条書きでご紹介します。
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- マカク・ザルの前頭葉F5野に、ある動作を自分がしている時と他者(飼育者等)が同じ動作をしているのを見ている時の両方で活動する神経細胞のあることが報告された。自分がある動作を実行する時と、他者の同じ動作を観察している時の両者であることから、ミラー・ニューロンと名付けられた。この神経細胞の働きとして、他者の動作・行動の理解、その目的の理解、模倣、模倣を通しての学習、さらには社会性の学習にも関係していると推測されている。ヒトにおけるミラー・ニューロンの存在は十分に実証されていない。
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- 「ミラーニューロン」があるから、人間は他者に「共感」することができる。「共感」とは「共に感じるコト」。誰かに辛く悲しい話しをされたら、その人の気持ちをくみとり、自分も辛く悲しい気分になる。自分の脳が、相手と同じように反応しているというわけである。
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- ストレスを感じている他者、特に同僚や家族を目にすると、神経系に瞬時に影響を受ける場合がある。別の研究グループによれば、被験者の26%が、ストレスを感じている人を見ただけで自身のコルチゾール(ストレスホルモン)のレベルが高まる。
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- ここ20年にわたって主流となっている科学的理論によると、他者の行動を即時に理解できるのは、「ミラーニューロン」のおかげだ。わたしたちの脳内において、目にした行為をあたかも自身のものであるかのように「共鳴する」運動神経細胞である。
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- ミラーニューロンシステムは,主に視覚入力された他者の運動から運動情報を抽出し,それと同様の運動プログラムをつくりだす働きがある。この他者の運動からつくりだされた運動プログラムを実行することにより,観察している運動と同じ運動を出力することが可能となる。(運動機能低下側のリハビリなど)
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- ミラーニューロンの「まねるパワー」は侮れない。一緒に暮らしている親子は共に過ごす時間が長い分、ミラーニューロンの影響力も大きくなる。「親の背を見て子は育つ」ということわざを脳科学的に表現すれば、子どもはミラーニューロンをとおして親の姿をまねしている。
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- TVで怪我した選手やそのシーンが映っただけでも、「痛い」「痛そう」と感じることがあり、この感覚も、ミラーニューロンによるものと言われている。痛みを感じた人とそれを見た人では同じ部位が活性化することが分かっており、見た人はある程度痛みに共感することができる。
「子は親の背を見て育つ」や「カエルの子はカエル」などの言葉はまさにミラーニューロンの仕組みそのもので、実際ミラーニューロンを感じている方は多数いらっしゃるのではないのでしょうか。治療師も患者を診ると同じ部位に同じ痛みを感じたり、実地業務にて最初にすることは「見学」、「見習い」ですよね。特定の人と一緒にいる期間が長いとその人のクセや、喋り方がうつってしまうなど、すべては人間には発達したミラーニューロンシステムがあるため「同調」が起きていたのだと知れたというのが今回の内容になります。
そこでですが、ミラーニューロンシステムには上記に紹介したように「利点」になる反面「欠点」になることもしばしばあります。例えば、勉強において学習効率を良くしたいとき、頭の良い人達に囲まれるとそれだけでミラーニューロンシステムが働き、自分の学習効率、成績があがるのが「利点」。映像で痛いシーンが流れると自分も痛い感じがしてネガティブな気持ちになるのが「欠点」。といったようなことですが、このミラーニューロンシステムには個人差があると思われます。例えば私は実際、痛そうな映像を見てもネガティブな気持ちにはほぼなりません。(ただのサイコパスなのかもしれませんが)
個人差があるということはミラーニューロンシステムはコントロールできるのではないでしょうか。成績の良くないグループにいても同調せずに自分だけ成績を良くしていく、だれかを治療していても痛いのがうつらないようにする、他人のストレスを受け取らないようにするなど、できることはいろいろありそうです。ミラーニューロンシステムがあるということを知っていることで、日常生活に取り入れていくことができ、より良い生活を送ることもできるのではないでしょうか。(子供との接し方や、ストレス対策など)
以上がミラーニューロンシステムについてです。